著作紹介Works

漢字んな話2

漢字んな話2

ひとつ上いく漢字入門 落語で100話。

「おわりに」から一部抜粋

 8月、肌を焦がす眩(まばゆ)い太陽の下、山や海に遊び、見知らぬ町を旅し、僕たちはわずかばかりの休暇を楽しみ、夏の思い出をつくる。しかし、と思うのだ。6日・広島原爆忌、9日・長崎原爆忌、12日・日航機墜落事故、15日・終戦記念日、そしてお盆。光が強ければ強いほど、その対極にある世界は、姿を鮮明にするということなのか。8月はまた、死者と向き合うときでもある。そして今年……。

 3月11日に発生した東日本大震災は、想定外の津波被害と原発事故を引き起こし、戦後日本が築いてきたはずの「安全…

漢字んな話

漢字んな話

漢字のウンチク落語で100話。読んで笑って漢字がわかる。

「はじめに」から一部抜粋

 夏空にモクモクそびえ立つ入道雲、耳の中で花火が炸裂したようにジリジリと蝉が鳴き交う裏山。僕はランニングに半ズボン、ゴムサンダル姿で、虫取り網を持って裏山探検に出かけた。頭のてっぺんから汗を流し、あちこち蚊に食われ、蝉におしっこをかけられ、オオカマキリに睨み付けられ、長いアリの行列に見とれていた。

 いつの間にか辺りは暗くなり、昼間あれほどたくましく思えた木々が、黒服の魔術師に姿を変えていた。僕は急に心細くなり、半べそをかきながら、それでも虫取り網…