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常識として知っておきたい正しい日本語の練習

うっかり間違えやすい日本語の本来の意味と使い方がスッキリわかる。

「まえがき」から一部抜粋

 言葉は時代とともに変化します。平安文学などに見られる「をかし」という古語は、現代ではニュアンスを変えて「おかしい」という形で残っています。一方、夏目漱石ら近代文学における言葉遣いは、すでに古典の域に入りつつあります。いま、インターネット環境のなかで新しい言葉が生まれ、瞬く間に拡散していく時代です。私たちは変化する言葉の速さに翻弄されていると言ってもいいのかもしれません。

 毎年、文化庁の「国語に関する世論調査」が話題になります。慣用句などを取り上げ、本来の意味とは異なる使い方をしている人がどれだけいるのかなどをまとめたものです。「雨模様」は「雨が降りそうな様子」なのか「小雨が降ったりやんだりしている様子」なのか。2010年度の調査によると、「雨が降りそうな様子」という本来の意味で理解している人は43.3%、「小雨が降ったりやんだりしている様子」だと理解している人は47.5%です。「雨模様」という言葉には、すでに二通りの解釈がほぼ同数存在していることになります。

 つまり雨模様なので「傘を持っていこうと思う人」と「傘をさす人」がいることになります。同じ言葉を聞いて行動が異なってしまうのです。これはコミュニケーションの齟齬にもつながります。

 文化庁の調査結果などを参考に、やや乱暴に結論づけると「正しい日本語があるのではなく、一般的に使われている言葉が正しい日本語だ」と言えるのかもしれません。時代によって変化し、一般化される言葉について「正しい日本語とは何か」を定義づけるのは困難です。本書でいう「正しい日本語」とは、主に「変化の過程にあっても、本来の意味として現在も通用しうる日本語」を言っています。いわゆる誤用が一般的になり辞書に採用されたとしても、本来の意味を理解しておくことは重要です。編集や校閲などに携わる場合は、情報を正確に伝えるためにも、言葉の変化について敏感であるべきだと思うのです。

2015年8月佳日 監修