ことばのたまゆら21.「レモン」
2018年09月2日
レモンスカッシュ、レモンサワーなどの飲み物が代表するように、レモンは初夏のイメージが強いのですが、実は冬の果物なのです。俳句の季語も晩秋です。スーパーなどでは一年中並んでいるので、果物としてお季節感はなくなりつつあります。それでも、初夏を奇想させるのはなぜか。我々が抱くレモンのイメージと実態のギャップが、情緒的魅力を醸し出しているようにも思えるのです。梶井基次郎の小説『檸檬』にも、レモンの形、香り、爽快感などが、「得体の知れない不吉な塊」と対峙する象徴的な役割として描かれいるのも、偶然ではないような気がします。